第66章 伝える
無事に日本一を掴んだ翌日。
私は凛を自宅へ招いた。
『碧はどうしたいの?』
その問いかけに、
まだ、ちゃんと答えていない。
まだ、ちゃんと伝えていない。
でも、自分の部屋に凛が居る。
それだけで、緊張する…。
帰り道がデート代わりだった私達だから、
この状況ははじめてだった。
せっかくの機会がこんな形になるなんて…。
ただ、ただ、数日前の自分を恨む。
向かい合った凛と私の間にある簡易テーブルの上には、広げたノートとシャープペンを置いておいた。
凛がいちいちケータイを出さなくても済むように…。
沈黙が胸に痛い…。
「あの…ね」
話しはじめようとしたのを制して、凛が立ち上がる。
本棚から取り出したのはアルバム。
『見てもいい?』
そういった感じでアルバムを指差して首を傾げる凛にコクンと頷いた。