第59章 佇む
「水戸部、遅くない?」
コガの声に、辺りを見回してみた。
リングを無くしたと探しに行った火神と、それを追いかけて行った黒子が戻って来たのに、
『今のうちにトイレに行く』と言った凛が戻って来ない。
ふらりとどこかへ行ってしまうような人じゃない。
どちらかと言えば、そう言う人を心配して探しに行く人だ。
(どうしたんだろう?)
『ちょっと探して来る』
そう言おうとすると、走って戻って来る凛の姿が見えた。
「遅いわよ。水戸部くん!」
角を生やしかけていたリコにペコペコと頭を下げて謝って、こちらを見る凛。
笑いかけようとしたのに、思わず身体が固まった。
怒ってる?
機嫌悪い?
こんな凛、見たこと無い…。
戸惑う私を余所に、
「黒子くんから話があるみたいだから…。じゃあ、行くわよ」
リコの言葉に皆が歩き出した。