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【黒子のバスケ】伝える。聴こえる。

第57章 傾く


空中でボールを取って3Pを打つ。

緑間くんと高尾くんから出されたとんでもない技に開いた口が塞がらない。

あれが尋常ではないのは、いくら私だって説明されなくても分かる。


そして、二人をサポートするように動く秀徳の3年生達。

清志くんだって例外じゃない。


全力でパスカットに向かう姿に、口から自然と「頑張って」と言う言葉が出た。


『お前に応援してもらった事なんかねぇ』


昨日、清志くんが言った言葉を思い出す。


『試合がある』と本人に言われても、
『一緒に行こう』とお兄ちゃんに誘われても、
『興味がない』と答えて行ったことはなかった。


それでも、何度断っても、
清志くんもお兄ちゃんも私を誘った。

不思議だった…。

私が行っても、清志くんは嬉しくないと思っていたから…。
私は清志くんにとって、厄介事の一つだと思っていたから…。



でも…
昨日の事があって、
高校最後の大会になって、
やっと、わかった。

きっと、清志くんは来てほしかったんだ…。
不器用な清志くんは『応援してほしい』と言えなかっただけなんだ…。

私はバカだ。
なんてバカなんだろう。

こんなに身近で頑張っている人を蔑ろにして来たくせに、高校に入って突然マネージャーをはじめた。

しかも、一番望んでくれたであろう人の側ではなく他校で。

それどころか、選手である凛とお付き合いをはじめて…。


『浮わついた気持ちでやってんじゃねぇよ』と前に怒鳴られた事を思い出す。

私は…

知らないうちに、たくさん清志くんを傷つけていたんだ…。


どうして、清志くんが積み上げて来た努力の数々を見て来なかったんだろう?

どうして、気がつけなかったんだろう?


ずっと蔑ろにしてきたのに、それでも、いつも側に居てくれて助けてくれていた清志くんは、どんな気持ちだったんだろう…。

何も知らずに甘えていた私は最低だ…。

きっと…
清志くんは苦しかっただろう…。



(ごめんなさい)

心のなかの謝罪は、清志くんへなのか、誠凛の皆へなのか…。

ただ、ひたすら、

(今だけ)
(今だけ)

と言い訳をして、

祈るようにコートの中の清志くんを見つめた。


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