第56章 崩れる
凛の肩を借りて、目を閉じていた。
意識はある。
周りの音も声も聞こえている。
でも、瞼が重くて目を開けることができなかった…。
眠っていると思ったんだろう。
伊月が「陽向、なんかあったのか?」
と、たぶん凛に聞いた。
「昨日も変だったよなー。なんか、あったのかなー?水戸部知らねーの?」
凛が首を振っているのを感じる。
「ん?珍しく夜にメールが来たって。寝れないみたいだったってさ」
「航さん居ないらしいのよ。無理にでも私の家に連れてけばよかったわ」
「違うだろ、ダァホ…。兄貴がいないぐらいでこんなんになるかよ。幼稚園児じゃねーんだから…。どうしたんだよ急に」
皆の会話に
「急じゃないだろう」と木吉が答えた。
「きっと、前はこうだったんじゃないか?『電車に乗れない』って、こうゆう事だったんだよ。起きたら普通に接してやればいいさ。何かあったなら、リコか水戸部に話すだろ?それまで待てばいい」
木吉の言葉に皆が「そうだな」と同意した。
凛が私の髪を撫でる。
(本当に、ごめんなさい)
(皆、ありがとう)