第56章 崩れる
ゆさゆさと身体を揺すられて重たい瞼を開ける。
撫でられているうちに、安心して眠ってしまったみたいだ…。
「次、降りるわよ。立てる?」
先程よりも混み合った車内に、一瞬たじろいだ。
でも…
(甘えてちゃダメだ)
(降りるだけ。降りるだけ)
自分に言い聞かせて立ち上がると、肩に手が回って身体が引き寄せられる。
微笑む凛はきっと、『大丈夫だよ』と『俺が居るよ』と言ってくれている。
強張っていた身体がほどけた。
背中に手を添えられて、促されるまま皆に遅れて電車を降りる。
「ふぅー」っと息を吐いて気持ちを落ち着けた。
凛にお礼を言おうと顔を上げると、
「女の子はちゃんと守ってあげてよね」という声がどこからか聞こえた。