第55章 彷徨う
『嘘ってお前…。嘘じゃねぇし、嘘ついてどーすんだよ』
口に出ていたらしい…。
「だって…」
ずっと、呆れられていると思っていた。
うっとうしがられていると思っていた。
いつも、清志くんは眉間にシワを寄せていて…
『今日の事は悪かった。許せとは言わねぇ。でも、俺は…』
また、言葉が途切れる。
『碧。俺じゃダメかよ…』
答える事が出来ない。
私は、清志くんにそうゆう感情を持った事はない。
私は、凛が…。
「清志くん…。私達、従兄妹だよ…」
辛うじて口にした言葉も
『従兄妹同士だって、結婚できんだよ。何が悪い?』
という清志くんの言葉に否定された。
頭の中がグシャグシャになっていく。
『なぁ、碧。アイツより、俺の方がお前の事はよく分かる。ガキの頃から一緒に居たんだ。お前の事見てたんだ。負けるわけねぇ。知り合って2年も経たねぇだろ?ただの同級生だろ?いつ別れるか、わかんねぇアイツより…』
「やめてよ…」
畳み掛ける様に喋りだした清志くんの言葉を遮った。
『別れる』なんてそんな言葉、考えたくない。
凛と一緒に居られなくなるなんて…。
そんなの…嫌だ。
「そんな事言わないで…。酷いよ…」
そう言って電話を切った。