第55章 彷徨う
どうして、そんなに辛そうなの?
どうして、あんな事したの?
どうして?どうして?
聞きたい事はあるのに、声にならない…。
返事をしない私に苛立っているのだろうか?
清志くんが話しはじめた。
『なぁ。俺の事、嫌いになったか?』
…嫌い?
わからない。
された事はイヤだった。
でも…嫌いになったのか?と聞かれると、答えに詰まる。
眉間に皺を寄せながらも、小さな頃からずっと、どんくさい私のお世話係りをしてくれていた清志くん。
理由もなく、あんな事なんかしないはず。
だから…。
『ガキの頃のおまじない…嬉しかった…』
「……」
『嬉しかったんだ…。お前に応援してもらった事なんかねぇし。だから余計…』
ケータイを握りしめたまま、黙って耳を傾ける。
沈黙があって、
『ふぅー』っと息を吐く音が聞こえて
『碧』と清志くんが呼んだ。
『俺…。お前が好きなんだよ…』
(えっ?嘘…)