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【黒子のバスケ】伝える。聴こえる。

第54章 誤魔化す


私が皆と合流できたのは前半が終わってからだった。

フラリとスタンド席に現れた私を見て、皆が発するのは「大丈夫か?」「顔色悪いぞ?」という心配の言葉。

ガタンと席を立ち上がった凛は心配そうにオロオロしながら眉を下げている。

言葉を出さずにコクンと頷いた。



「水戸部くん、落ち着いて。碧、ちょっと、こっちにいらっしゃい」

リコに言われて隣に座った。


「はい。荷物」
私のカバンを手渡す。

「心配したわよー。急に居なくなるんだから。まだ、顔色悪いわよ?」

リコが私の顔を覗いた。

「ごめんなさい…」

「別にいいんだけど…。どうしたのよ?」

答える事が出来なかった。

「一人なのか?」

今度は木吉が聞く。

「えっ?」

「うん?だって、火神の…」

「あっ!ア、アレックス!帰ったんすか!?」

木吉の言葉を遮って、火神が聞いてきた。

口裏を合わせてくれている。

(ごめん。火神…)


「う、うん。先に帰るって…」

驚く程スムーズに自分の口から嘘が出た。


フロアから後半開始の合図が鳴って、皆がコートに目を向けた。

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