第53章 揺さぶる
どれくらい、そうされていたのかわからない。
たぶん1分も無い。
数十秒の事だろう…。
それでも、物凄く長く感じたその時間は、「わりぃ。碧」と言う清志くんの言葉で、やっと解放された。
「俺…」
「…い、嫌ッ‼」
清志くんが言おうとした言葉も、意識がふらつく私を支える腕も振り払う。
逃げ出したい。清志くんの側に居たくない。
頭の中に浮かぶのは『なんで?』の言葉。
なんで…こんな事するの?
「待て!」という声を無視して、足を動かした。
上手く走れない。
足がもつれる。
それでも、少しでも離れたい。
気持ちばかりが焦って、
どんくさい私は派手に転んだ。
膝に血が滲む。
目に涙が溜まる。
それが、傷みからなのか、悲しさからなのかわからない。
(凛…。凛…)
(ごめんなさい…)
膝を抱えたまま、立ち上がる事の出来ない私に、
「大丈夫すっか?」と手が差し出された。
見上げれば、チームメイトの顔が見える。
「火神…」