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【黒子のバスケ】伝える。聴こえる。

第53章 揺さぶる


「清志くん…?」

かろうじて自由がきく頭だけを動かして清志くんを見上げた。


辛そうに顔を歪めた清志くんと目が合う。


「まじで…。何でだよ…」

「わ、私…」



言おうとした言葉は飲み込まれた。

頭の後ろを押さえられて、唇が塞がれる。

噛みつかれるような、
飲み込まれるような、

経験のない感覚に、頭がクラクラした。



息が苦しい…。



酸素を求めて、ぎゅっと閉じていた口を緩めてしまえば、

唇を割って抉じ開ける様に、ぬるりと口の中に入り込んでくる。



(こんなの…イヤだ…)



深く深く堕ちていく様に
思考を奪いとる様に

絡まるそれに、

グラグラと頭の中が揺さぶられていく。

思考の端に、凛の姿が浮かんで…

もやがかかるように消えていく。


抵抗しようと必死に腕に力を込めるけど、
押し返す程の力は私には無くて…

力は抜けていくばかりで…



(もう…離して…)



苦しさなのか
悲しさなのか


色んな気持ちがぐちゃぐちゃになって、

ぽろぽろと涙が零れた。



ポケットでは先程と同じようにケータイのバイブが響いていた。

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