第52章 手当たる
「頼みがある…」
木吉の言葉にリコは「小金井くん。土田くん。あとよろしく」とベンチの皆を見た。
第3Q途中から、
「イージスの盾破り」と称して、オフェンスではPG をディフェンスではCを、一人二役こなしていた木吉。
やはり体力の消耗が激しい。
『それでも』と紫原くんに必死に対抗する彼だったけど、遂に倒れてしまって、日向に支えられながらベンチに帰って来た。
タオルを被って悔しそうにしていた木吉。
先程のインターバルで何かに感化されたんだろう。
「もう一度出たい」と言い出した。
「3分だけ頂戴。その間だけ指揮を任せるわ。碧、3分経ったら医務室来て」
「うん。わかった」
そう言うとリコと福田に支えられた木吉がフロアから出ていく。
(皆、頑張って…)
コート内に目を移せば、思いとは裏腹に徐々に点差が開き出した。
コート内の皆は必死だ。
それでも…。
時計を見れば3分経とうとしていた。
「コガ、土田、行ってくるね」
「おう」
二人の返事を背中に聞いて、医務室へ向かった。