第50章 始まる
インターバル。
ユニホーム姿のまま、上着も羽織らずに控え室を出て行った黒子に、ジャージを渡しに行こうとしたら火神に止められた。
「オレが行くっす」
「でも、休んでた方が…」
「大丈夫っす」
また『でも…』と言いかけ時、誰かが肩に手を置いた。
振り返ると首を振っている凛がいる。
『火神に行かせた方がいい』と言っているんだろう…。
確かに、『身体が冷えると…』と思って安易に手にしたジャージだったが、私が行った所で黒子を慰められる訳でもないし、どう声をかけたらいいのか分からない…。
そもそも、慰めがいるのかどうか…。
黒子の気持ちもわからない。
凛にコクンと頷いて、火神を見た。
「わかった。お願いね」
手にあるジャージを差し出す。
「うす」と受け取った火神は、いつもと少し雰囲気が違っていて…
ドアノブに手をかける大きな背中に、もう一度「お願いね」と呟いた。