第50章 始まる
「黒子…」
いくらベンチに居たってコートの中の会話が全部聞こえる訳じゃない。
それでも、黒子が冷静さを失うなんてよっぽどの事だというのはわかった。
「やめろ!黒子!」と言う伊月の声がコートに響く。
3Pの打ち合いだった第1Qが終わって『もう一度行かせてください』と出て行った第2Q。
青峰くんと対峙した黒子が出した黒子だけのドライブは、いとも容易く彼に止められてしまった。
皆が驚愕する中、あわててリコがタイムアウトを出すが、そのまま連続でゴールされ(時計が止まれ)と必死に祈った。
ボールデッドでブザーが鳴って、皆が戻ってくる。
ベンチで交替を告げられた黒子が、ぎゅっと拳を握り締めていたのが見えた。