第50章 始まる
火神と一緒に戻ってきた黒子は先程と表情が違う。
並ぶ二人を見て、私が行かなくてよかったと胸を撫で下ろした。
そっと凛の隣へ行き、「ありがとう」と小声で言う。
真意は伝わったようで、ニコリと笑顔が返って来た。
皆で控え室を出て、フロアへ、ベンチへ向かう。
(頑張って)
これしか言えない自分がもどかしいが、どうしようもない。
相手側のマネージャーじゃあるまいし、凡人の私に出来ることは限られている。
列の一番後ろを歩き、一人一人の背中を見ながら、(勝てます様に…怪我がありませんように…)とひたすら祈った。