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【黒子のバスケ】伝える。聴こえる。

第49章 休める


風呂上がり。

浴衣は好きじゃないので、いつもの格好に着替えた。
髪を乾かすのが面倒でタオルドライ。
温泉で暖まり過ぎた身体に湿った髪がちょっと冷たくて気持ちいい。


(何にしよう?)


入り口横の自販機で飲み物を選んでいると、視界の端で男湯の暖簾が揺れて、ガヤガヤとバスケ部の皆が出てきた。


目当ての物のボタンを押して、そちらに目線を移せば、


「えっ?なんでそんなに真っ赤なの?逆上せてない?」

いくら入浴後といえども、誰もが異常に顔を赤らめている姿に驚く。


「あっ、陽向。桐皇とジュースかけてサウナ対決したんだよ」

コガが答える。


「そ、そんな…くだらない事やってたの?」

「くだらなくねぇ。売られた喧嘩買っただけだ」

今度は日向が答えた。


(売られた喧嘩って…やっぱりくだらないよ。それに…)

「じゃぁ、女湯…覗くのも、くだらなくない事?」



聞き返すと、皆が視線をそらす。

(リコに聞いたんだから)



「あの、ね…」


問い詰めたいわけでは無い。でも、私の思いを聞いて欲しくて、俯きながらではあるけれど、口を開いた。



「本とか映像とかさ、そうゆうのは致し方ない事だとは思うけど…。覗きはね、ダメ…だよ。私…皆がそうゆう事するの、い、嫌、だな…」


顔を少し上げれば見えるのは、俯いたり、ばつの悪そうな顔をする皆の姿。




少し間が開いて


「悪かった」


聞こえてきた日向の謝罪に、
「ううん。わかってくれてありがとう」と答えて、取りだし口に手をいれると頭にタオルが乗った。


たぶん凛だ。

「ちゃんと乾かせって言ってるよ」

何時もより遠慮がちなコガの声がするので、振り向いて顔をあげた。


「えっ?凛、顔!真っ赤!」

「あー。サウナ勝負、水戸部が最後まで残って勝ったんだよ」

「え?そう言う事じゃないよ。人の心配してる場合じゃないよ」


今さっき取りだした缶ジュースを凛の頬へ押し付けた。


「あげる。もう、変な事しないで…」

サウナと覗きと、
両方の意味を込めて言ったつもりだ。

少し驚いた表情の凛がコクリと頷く。


一瞬の沈黙があって、


「人前でイチャイチャしてんじゃねーよ。ダァホ」と日向の声がして、


取り囲む雰囲気が少しだけいつも通りに戻って、

皆が私達の横を通り過ぎて行った。

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