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【黒子のバスケ】伝える。聴こえる。

第49章 休める


そのまま二人でベンチに腰掛けた。

凛がプシュっとプルタブを開けて、私に差し出す。

「凛が飲んで。本当に顔赤い…」

フルフルと首を振って拒否された。

ずいっと口元にそれが当てられる。
納得はいかないが目の前の缶を受け取り、ひとくち、ふたくち飲んだ。


缶を口から離すと横から手が伸びてきて、そのまま残りを凛が飲み干す。

上下する喉に、
口を拭う仕草に、何故か心臓が跳ねた。

見慣れているハズなのに…。

クシャッと凛の手のひらから缶の潰れる音が鳴って空になったそれはゴミ箱へ放り込まれる。


ドキドキが消えない。




今度は、私の髪に指を通して怒った顔をする。

『ちゃんと乾かさないとダメ』と言われているんだろう。

「今日だけだから許して」と言えば、またタオルが被せられてガシガシと拭かれた。
けして乱暴ではなく、とても心地いい。

思わず目を閉じそうになる。けど…

やっぱり…

頭にちらつくのは…



「そ、そんなに…見たかったの?女湯…」


凛の手が止まった。


凛が言い出した訳では無い事くらいはわかる。きっと、コガとかその辺だろう。

それに、さっきこの話はしたんだから蒸し返すべきでは無い。
それはわかってる。わかってるけど…


でもさ、
でも…さ、


異性の身体に興味を持つ事は仕方ない。健全な男子なら当たり前の事。


でも、だからって『女湯を覗く』という行為は嫌で…。だって犯罪だし…。

だから…中々、納得出来なかった。


溢れそうになる涙をぐっと堪えて、


「凛…も、男子だもんね…」


私の言葉に、眉を下げた凛がブンブンと首を横に振る。

腕が伸びてきて、苦しい位にぎゅうっと抱き締められた。

『ごめん。違うんだ…』

そう、言いたげに…。


若干の戸惑いから、彼の腕を突っぱねようとしたけど無理だった。


凛から石鹸の匂いがする



「もういいよ。制裁はリコがしたみたいだし…変な事言って…ごめんね」

身体を離した凛はオロオロと目を泳がせて泣きそうな顔をしていたので、いつもとは逆で私が凛の頭を撫でた。

「戻ろっか?」

そう言って立ち上がり、手のひらを出すと、ぎゅっと大きな手に包み込まれる。


凛の手は安心する。
嫌な気持ちを洗い流してくれる。

大丈夫。大丈夫。


そのまま、旅館の廊下を手を繋いで歩いた。
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