第1章 入学
新しい環境に踏み込むのは緊張する。
そもそも、私は人見知りだ。
ドキドキしながら、教室の扉を開けた。
「あの子、背高い…」
そんな呟きが聞こえてビクリと心臓が跳ねる。
自意識過剰だと思われるかもしれないが、
自分の事を言われて緊張してしまった。
そのまま声を掛ければよかったのに、
友達をつくるチャンスだったのに、
聞こえなかったふりをして整然と並べられた机を縫って歩き、指定されている席に着いた。
私の席は中央列の一番後ろ。
これから一年間共に過ごすクラスメートを見渡せば、既に打ち解けた様子でおしゃべりをする姿もちらほら。
さっきのチャンスを不意にしてしまったから…
自分から話し掛けなきゃ…
早く友達を作らなきゃ…
なのに、
気負えば、気負う程、話し掛けられない。
『はじめまして』
『よろしくね』
そう言えばいいだけなのに…言えない。
私なんかと仲良くなってくれる人はいるんだろうか…??
そんな思いが頭を掠める。
「はぁ…」
ため息か溢れる…。
さっきの決意はどこに行ったのか…
何も変われない自分に落胆していると、私の横に影ができた。
隣の席にとても背の高い男子が鞄をおろしている。