第48章 手にする
相手の『荒っぽい』を通り越したプレーを、
傷や痣が増えていく選手を、
見ていられない。
火神や日向がイライラするのもわかる。
途中から「中は一人でいい」と言った木吉に対しては特に酷くて、思わず目を背けた。
コートの中の雰囲気が悪い…。
記録の手が止まってしまって、無意識にぎゅっと握りしめていた拳に、手のひらが乗る。
顔を上げると眉を下げた凛がいた。
凛の手が私の拳を開く。
そんなに強く握りしめていた意識はなかったけど、しっかりと爪の後が残っていて、所々、赤くなったり青くなったりしていた。
「陽向」
コガが呼ぶ。
「心配なのはわかるけど、俺もイライラしてるけど、自分で傷つけちゃダメだよ」
「ごめん…」
選手達が頑張ってるんだ。
私が目を背けちゃいけない。
眉を下げたままの凛が私の手を擦るが、
「大丈夫。ありがとう」
そう言って、凛の手を離した。