第45章 動き出す
秀徳戦。
試合前のベンチで木吉の話しを聞くと皆の顔つきが締まる。
緊迫感がこちらにも伝わって来た。
(皆、頑張って)
声に出せるような雰囲気ではなく、心の中で祈った。
試合が始まると、互いに火花を散らせて譲らない。
息つまる攻防なんて言うけど、まさにその通り。
目の前で行き交うコートの中の皆を見ながら、相手側の一人に目がとまった。
(清志くん…)
清志くんは三年生だ。
私だって、誠凛の皆と同じで秀徳には勝ちたいと思っている。
でも…最後のチャンスだから清志くんにもWCには出て欲しい。
『一緒に出られたら…』なんて思う私は甘いんだろうか?
少なくとも、相手側の選手を気に止めるなんて、誠凛のマネージャーとしては失格だろう。
頭の中の考えを、首を横に振ることで振り払った。