第44章 変わる【side水戸部】
「凛?まだ、怒ってるの?」
少し不安そうに碧が問いかける。
教室を出たのはいいが、行くあてなんて部室くらいしかなかった。
扉を開けると尻尾を振って出迎えてくれた二号が、今は呆れた顔をしてこっちを見ている。
「私、もう気にしてないよ。言いたいことは言えたし。まぁ、ああやって言われちゃうのはよくある事でもあるし…」
気にしてないなんて…簡単に許しちゃダメだよ。
よくある事にしちゃダメ。
「凛がそんなに怒ること無いよ」
その言葉に顔をあげた。
ポケットに手を入れてケータイを取り出す。
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碧が嫌な思いしたのに、怒らないはずない
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打ち出した文面を彼女に向ける。
容姿をからかうなんて最低だ。
ましてや自分の大事な人が、あんな風に言われるなんて…。
しかも、アイツら『触らせて』って言った。
また、沸々と怒りが沸く。
すると、「ありがとう」と碧が笑った。
ふわりと笑う。俺の好きな表情。
そんな彼女の頭に自然と自分の手が伸びる。
「凛。教室戻る?このままここにいる?」
その問いかけにぐいと腕を引っぱって、自分のなかに閉じ込めた。
碧を教室に戻したくない。
彼等の前に連れて行きたくない。
二人でここに居たい。
ぎゅっと彼女の身体を抱き締めると、
「わかった」と返事をくれて、
腕を回して…
少しためらいながら、俺のシャツをぎゅっと握るその手がたまらなく愛しくなった。