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【黒子のバスケ】伝える。聴こえる。

第44章 変わる【side水戸部】


隣で月バスを見ていた碧がうつらうつらとしている。

慣れない事をして、きっと疲れたんだろう…。
さっきまで、パタパタと動いて掃除してたし…。
無理しないで寝ちゃえばいいのに…。

揺れている頭を自分の肩に凭れさせて、ちょっと驚いた表情を気に止めず、サラサラと零れる髪を撫でていると、そのまま眠っていった。

スゥスゥと寝息が聞こえる。
それに合わせて彼女の胸が上下する。

『でかいよな』
『どんくらいあんの?』

さっきの言葉がまた頭を掠めた。

『スタイルがいい』と言われているのは聞くし、それだけじゃなく下世話な話のネタにされているのも耳に入る。

そのせいで碧が自分の容姿にコンプレックスを持っているのも知ってる。

それに、俺は身体つきで彼女に好意を寄せたわけじゃない。

顔が好みじゃないとは、もちろん言わないけど…

彼女の優しい所、よく気がつく所、ふわりとした笑顔が好きで、
たまに見せる幼い仕草が可愛くて、
少し無理してでも独りで頑張ろうとする所がほっとけなくて…。

なのに…。
むくむくと沸き出す邪な気持ち。


『もうヤった?』

その言葉が頭の中に聞こえて、ブンブンと首を振る。

そんな事…。

したくない訳じゃない。
俺だって男だからそうゆう欲はある。
碧を想像する。

だけど…
何かあっても今の俺では責任は取れない。彼女を傷つけるだけだ…。


でも…
確かに…大きいと思う。
たまに自分の身体に当たるとドキッとする。


スヤスヤと上下する彼女の胸元。
意識しないようにすればするほど気になって、
つい、目線を向けてしまう。


制服の下を想像して、勝手に身体が反応する。

というか、無防備すぎ…
この状況で俺が押し倒したらどうするの?

否、寝かせたのは俺だけど…。


…彼女に触れたい。
触ってみたい…。

許してくれるだろうか?
受け入れてくれる?

手が伸びかけた時、授業終了のチャイムが聞こえた。

あぁ、ダメだ。何、考えてるんだ…。

俺を信頼しきって、身体を預けて眠っている彼女に向けてこんな事考えてるなんて、さっきのヤツらと変わらないじゃないか。

もうすぐ皆が来る。
それまで寝かせておいてあげよう。

伸ばしかけた手を一度引っ込めて、
もう一回伸ばして、気持ちよさそうに寝ている彼女の髪をそっと撫でた。
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