第43章 変わる
凛と部室にいる。
自習とはいえ、授業をサボるのなんてはじめてだ。
「大丈夫かなぁ?」
部室の隅で丸まっている二号を撫でながら呟くと、「わふぅ…」とため息をつく、小さな部員。
呆れ顔も、いつも黒子が見せる顔にそっくり。
「凛?まだ、怒ってるの?」
そっぽを向いたまま、凛の反応はない。
「私、もう気にしてないよ。言いたいことは言えたし。まぁ、ああやって言われちゃうのはよくある事でもあるし…」
まだ、無い…。
「凛がそんなに怒ること無いよ」
そう言うと、怒りの目をこちらに向けた。
ポケットに手を入れてケータイを取り出す。
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碧が嫌な思いしたのに、怒らないはずない
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差し出された文面に笑みが零れる。
彼等に私の言葉が伝わったかどうかはわからないけど、凛がそう言ってくれるだけで充分だ。
「ありがとう」
凛の顔が少し緩んだ。
伸びてくる手のひらが、優しく頭を撫でてくれる。
『頑張ったね』
そう言われている気がした。
「凛。教室戻る?このままここにいる?」
問いかけると、ぐいと腕を引かれて、私の体は凛の胸の中へ収まる。
ぎゅーっと抱き締められた。
「わかった」
『ここにいる』
そう言いたげに腕にこもる力。
それに答えるように、私も腕を回して、凛のシャツをぎゅっと握った。
それからは…
散らかっている部室を少し片付けて、
二号とあそんだり、
並んで月バスを見たり、
お互いに授業中だって事を忘れて、穏やかに過ごした。