第41章 踏み出す
山合宿初日。
駅のホームで「ついた!」と思わずリコに抱きついた。
というか、端から見たら一方的に私が抱き締めているように見えるだろう…。
それくらいの身長差が私達にはある。
「もう、わかったわよ」
笑って私を抱き返すリコ。
結局…。
皆で電車に乗って合宿へ向かったものの、座席について数分もしない内に、もう、音を上げそうになっていた私。
私の気が逸れるようにコガやリコがしきりに話しかけてくれたり、
凛がぎゅっと手を握ってくれていたけど、
やっぱり、ソワソワとしてしまい落ち着かなくて…
どうしても下ばかり向いて背中を丸めてしまう私に、
凛は自分の肩に私の頭を押し付けて、手のひらで目をふさいだ。
『寝てしまえ』ということだろう。
促されるままに目を閉じて、
そのまま髪や背中を撫でられる心地よさに、
気づけば、本当に寝てしまった。
凛の手は本当に不思議。
私にとって、魔法みたいな手。
そうして、起こされた時には目的の駅で、思わずリコに抱きついたのだ。
「ほらね。大丈夫よ」とリコが言う。
隣では、「水戸部すげーな。本当に寝ちゃうもんなー。兄弟寝かしつける技?」とコガが聞いていた。
「本当に水戸部と碧はよく似てるけど正反対だな」
後ろを歩く木吉がしみじみと言う。
確か前にもそんな事を言われた気がした。
意味がわからなくて聞いてみたけど答えてはくれなかった。
今もその意味が全然わからない。
「木吉ー。それ、どーゆうこと?似てるけど正反対って何?」
振りかえってコガが聞いた。