第39章 陰る
『どうしたの?』
驚いた顔で凛が首を傾げる。
「な、なんでもないよ。ごめん」
そう言って誤魔化すが、じっとこちらを見る目が訴えるのは、
『なんでもなくないでしょ?』という言葉。
こうなると凛は頑固で、私が話すまで納得はしてくれない。
本当はこのモヤモヤを、
醜いであろう濁った感情を、
凛に知られたくはないんだけど…。
「桃井さん…」
と口にした。
考え込む顔が見える。
「可愛い…よね。凛の顔、赤かった…」
呆れられるかと思ったけど、思い切って話した。
おずおずと顔をあげると凛が肩を揺らして笑ってる。
なんで笑うの…?
フツフツと、怒りや悔しさに似たような、
先程よりも強く濁った感情が沸いてきて、
「もう、いい。一人で帰る…」
そう言って歩き出した。