第37章 行き交う
「なんでっすか?またっすか!?」
食ってかかる火神を諌めて体育館から追い出す。
もはや私の仕事の一つになった。
何度か火神の勢いに負けそうになっていたけれど…。
「頑張ってねー」
今日も無事に火神を追い出して、
一仕事を終えた様な小さな充足感を胸に体育館へ足を向けると、「危ない‼」と言う声が聞こえた。
ボールが飛んで来るのが見える。
けれど、それに反応できる程、私の反射神経は良くない。
あー。当たる。
そう思ったのと同時にバシン‼と大きな音をたてて、ボールは私の肩に当たった。
痛い…。
バスケットボールって固くて重いんだよね。
当たったのが顔や頭じゃなくて良かったと思う。
思わず肩を押さえそうになったけど、おそらくボールを取り損ねたであろう降旗が顔を青くしているので、出来なかった。
きっと、彼は物凄く気にするタイプ。
「碧、大丈夫?」
小走りでリコが寄ってくる。
「大丈夫。避けられなかった私も悪いよ」
そう返事をすると、心配そうな顔をして、選手の皆もこちらへ集まってこようとした。
誠凛だけじゃない、秀徳の皆さんも…。
「だ、大丈夫です‼気にしないで下さい‼練習、続けて下さい‼」
私なんかの為に、いつまでも貴重な練習時間を止める訳にはいかない。
精一杯、声を張り上げた。
私の訴えを聞いて、皆の足が止まったので、ホッとする。
それでも、そばまで来ていた凛が心配そうに眉を下げているので『大丈夫だよ』と目で合図した。