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【黒子のバスケ】伝える。聴こえる。

第37章 行き交う


ビクリと身体が跳ねる。
おそるおそる、捕まれた方に顔をむけると坊主頭の人が居た。

…えっと、確か…、木村さん

「なぁ、食べてかないか?」

木村さんは固まる私を気にせず、とてもいい笑顔で皆さんの方を指さす。

「スイカ…ですか?」

「おう。よかったらどうだ?」


スイカは好きだけど…
物凄く美味しそうだけど…
私が頂いてもいいのだろうか?
誠凛の皆は練習してるのに、私だけ食べるのもどうか?


色々と頭を巡っている間に「おいで、おいで」と高尾くんが手招きして寄ってきて、大坪さんや、木村さんには背中を押されて促される。

スイカは木村さんからの差し入れだと高尾くんが教えてくれた。

幾らか戸惑いながら3人に促されるままに歩くと見兼ねた清志くんが寄って来て、

「だから、囲まれるの苦手だから、コイツをあんま囲むなって言ってんだろーが」

そう言って、片手を伸ばし自分の方に引き寄せた。



持っていたスイカの先端を少し折って、私の口元へ持ってくる。

「口開けろ」

「えっ?」

「いいから開けろ!垂れる!」

おずおずと口を開ければ、清志くんの手にあったスイカが口の中に放り込まれて、瑞々しい甘さが広がった。

「美味しい…」

思わず頬が緩む。
この暑さに冷たいスイカは幸せ。


「ありがとう。これ、使って」

清志くんに差し出したのはタオル。
私に食べさせたせいで、清志くんの手はベタベタだ。

「まだあるぞ。おいで」

木村さんにそう言われて頷こうとしたときケータイが鳴った。


「すみません」と断って通話ボタンを押す。

「いつまでかかってんのよ!早く戻ってらっしゃい‼」

ご立腹のリコの声は周りに居た人達にも聞こえたらしい…。

皆、苦笑い。


「ごめんね。すぐに戻ります」と電話を切った。


「あ、あの…」

「否、いいんだ。引き留めて悪かったな」

大坪さんが申し訳なさそうに微笑む。


「いえ…そんな…。あの…木村さん。スイカ美味しかったです。ご馳走さまでした。皆さん、お邪魔してすみませんでした。失礼します」

そう言って、頭を下げて走り出した。
あまり遅くなるとペナルティがあるかもしれない…。

「走るな!転ぶぞ‼」

そう言う清志くんに振り向き、もう一度頭を下げると皆さんが手を振って見送って下さった。
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