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【黒子のバスケ】伝える。聴こえる。

第37章 行き交う


早朝の調理場。

「手伝うわよ」


本来、居るはずでは無いリコの言葉に固まってしまった。



今日もハードな練習になるだろうから、朝食はしっかり食べてもらいたい。

そう思って、準備をはじめたときに現れたリコ。


理由をつけて、お引き取り願うのが皆の安全の為だとは思うけど、エプロンをつけてヤル気満々の彼女はそうそう引き下がらない。


仕方なく、

「お願いします…」と、返事をした。


その後の調理場はてんやわんやで、
ドタバタと調理中には似つかわしくない音が響く。


見るに見かねた、聞くに聞きかねた日向が、扉から顔を出し助け船を出してくれた。


「カントク、黒子と火神がまだなんだ。呼んできてくれ」


日向の言葉に、リコは厨房を後にする。

包丁を持ったままだけど…。まぁ、いいか。



「ありがとう」


リコが去った後に日向にお礼を言うと、

日向を筆頭にバスケ部の皆に必死な顔ですがり付かれた。


「本当に頼む。マジで頼む」

「そうだぞ、陽向。俺らの運命はお前にかかってる」

「こればっかりは死活問題だからな」

口々に漏れる言葉に、


「今回はごめんなさい。次からは気を付けます…」

と、頭を下げた。



その態度が、なんだか誤解を産んでしまったらしい。

皆の顔が青ざめていき、苦笑いが見えたので、


「大丈夫。バタバタはしたけど、ちゃんと食べれるから」

そう伝えて、よそった朝食を並べていった。



食べるのも練習のうち‼という方針に基づいて、決まった量を食べなければいけない皆は必死だ。


気合いを入れる様に、頭にタオルを巻いている凛。

そのタオルを見て、つい頬が緩んでしまった。


名前が刺繍されたあのタオルは私が去年の誕生日にプレゼントしたものだ。


ちょっと、刺繍が大きすぎちゃったかな…?


心の中で呟いていると、

「碧?どうした?何、ニヤついてるんだ?」と、

木吉に腕をつつかれた。




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