第37章 行き交う
最後に並んでいたのは凛だった。
「どうぞ」
タオルを手渡すと、少し怒った顔をした凛がそのまま腕を伸ばし、私の額にタオルを当てる。
「ちょっ…なんで?凛が使って。暑いでしょ?」
私の問いに、怒ったままの凛はフルフルと首ふった。
持っていたジャグが目の前に差し出される。
「飲めってこと?」
今度はコクリと頷く。
「えっ?でも…凛の…」
言っている途中で口元にジャグが押し当てられた。
されるがままにコクンと一口飲むと、
ずいっとそのままジャグを手渡され、
腕を引かれて、連れて来られたのはリコの所。
休憩中にちゃんと休まない火神を叱るリコの肩を凛がトントンと叩いて、私の顔を指差す。
「ちょっと、碧‼顔真っ赤じゃない‼気を付けろって言ったでしょ?」
リコの言葉に、
『激しく同意』
とでも言いたげに、凛はまたコクコクと頷いた。
訳が分からないまま二人から怒られて、
つい、ぽかんとしてしまう私。
「はぁ…。自覚ないの?今日はこのまま宿に戻って。涼しい所で休んでなさい」
ため息をつかれながら、そこまで言われて、やっと理解した。
私は去年の合宿で、暑さにやられて倒れている。
そのときは凛が運んでくれたらしい。
でも…いくら凛が大きくても170センチを越えてしまった女子を運ぶのは大変だっただろう…。
華奢で小さなリコならともかく…。
よりによって、デカイ私が倒れるとか…
本当、迷惑極まりない。
だから…
今年は迷惑をかけまいと思ってたのに…。
「うん。ごめんね。ある程度休んだら食事の用意はじめるね」
謝罪を述べて、トボトボと一人で宿に向かった。
(明日からは、油断せずに気を付けよう…)
そう、小さく決意した。