第37章 行き交う
「全員分あるよ。脱いだTシャツは洗うからこの籠入れてね」
そう言うと皆がわらわらと集まってくる。
次々に手が伸びてきたが、まずは影の薄い後輩を呼ばないと。
「黒子くーん」
「ここです」
不満げに、ぬっと、目の前に現れた彼。
忘れない様に最初に手渡す。
黒子の突然の登場にはだいぶ慣れた。
ただ、未だに見つけるのは下手くそだし、他の事に気を取られると、つい忘れてしまうので、一番最初に黒子に渡す癖をつけている。
「なんで黒子が最初なんだ…ですか?」
やり取りを見ていた火神が、いかにも不思議そうに聞くので、失礼にならないように答えようと思案していると、
私が答えるより早く
「忘れるからですよ」と黒子が答えた。
「…すみません」
「いえ。慣れてますから」
ポーカーフェイスを向ける黒子は、
きっと、心の中で呆れているんだと思う。
顔には出さないだけで…。
その後は行儀よく列ができていて、
それぞれ順番に手渡すと、
「冷てー」とか「気持ちー」とか言う声が聞こえた。