第36章 伏せる
次の日。
朝練は休ませてもらって登校すると、学校へと向かう道の交差点で梓ちゃんに会った。
「おはよ。もう大丈夫?」
「おはよう。大丈夫だよ」
二人で並んで歩く。
「そういえばさ…」
何か思い出したように、クスクス笑いながら梓ちゃんが喋り出した。
「昨日の水戸部、笑えた。デカイ背中丸めて、ため息ばっかりだったよ」
ニヤリと笑って、私の顔を見上げて、
「心配してたんだねー。寂しかったかなー?」
と、私の腕をつつく。
ちょっと恥ずかしい…。
「聞きたいんだけどさ…」
表情を変えた梓ちゃんが、見上げる様に私を見据えた。
「水戸部って、喋らないの?喋れないの?」
「えっ?聞いたことないから分かんない…」
そう答えると驚いたような、でも、不思議そうな顔をした梓ちゃんからの質問が続く。
「二人の時は喋ったりしないの?」
「あのまんまだよ。どうしても分からないときとか、大事なときとかはケータイが出てくるけど…」
「私、コガみたいにわかんないからさ」と続けて笑えば、少し考えるような仕草をした後に、気まずそうに口を開いた。
「いいの?それで」
聞かれた事の意味が分からなくて首を傾げる。