第32章 聞かれる
近くのお好み焼き屋さんに皆で入った。
凛が『何にする?』とメニューを広げて、私に見せる。
「あんまりお腹空いてないかな?私、動いてないし」
そう言えば。
「碧はもう少し食べなきゃダメよ…」
と、リコがため息を漏らす。
「はぁい…」
素直に返事をしてメニューを眺めてみたけど…
丸々一つ食べれる気がしない。
こうゆうのを食べる時はいつも、清志くんやお兄ちゃんが自分の分を少な目に頼んで、私のを半分もらってくれる。
私が食べきれない事を分かっているから、二人のうちのどちらかが、はじめからそうしてくれていた。
どうしよう?
いつまでも迷っていると、リコから有り難い提案が…。
「一個は無理なら、じゃぁ、半分こしましょ」
「うん。ありがと」
リコの提案に乗って、ほっと一息つけば、凛の向こう側に座るコガに、
「陽向って食べないし、運動も苦手なのに、なんで背が伸びるのー?俺よりも高いし、そのうち伊月に追い付きそうじゃない?なんか、ズルイ‼」
なんて言われて、ムッとした。
背の高さはコンプレックスなんだもん…
ズルくなんて無いし、私は小さくなりたいのに。
口には出来ないけど、心の中で叫ぶ。
たぶん、不愉快は顔に出ていただろう…。
凛が自分の頭に手の平をあてて真っ直ぐ私に向かって動かした。
まるで、背を測るように…。
きっと『俺よりは小さい』と宥められていると思う。
でも…
凛よりは小さくても、コガより高いってことは、黒子や降旗より大きいんだよね。伊月には追いつきたくないよ。私…。
わかってたけど、なんとなくショックだ…。
「ねぇねぇ。それより、あそこのテーブル‼」
ワクワクした声のリコに促されてそちらを向けば、
少し離れたテーブルに座るカラフルな4人。
ここに着いてすぐ、思わぬ合流があってこうなったんだけど…
あのテーブルはなんだか険悪そうな雰囲気だ。
この状況を、たぶん意図的につくり出したであろう本人は、黄瀬くんのとこのキャプテンさんを一年生の席へ座らせると、何故かこちらへやって来た。
「マネージャーさん♪」
えっ、私?