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【黒子のバスケ】伝える。聴こえる。

第31章 募る


放課後。
私は音楽室に居た。


堀内くんの『お願い』にリコがあっさりokを出したからだ。

okが出たからなのか、どうかはわからないけれど、今日一日、凛は少し不機嫌だった。

放課後の事で堀内くんが話しかけてくる度に不機嫌さは増す。

何度、『断った方がいい?』と口にしかけただろう…。

でも、堀内くんのお願いは、彼自身の為ではなく、彼が所属する部の為、それに学校の為でもあるので、リコはokを出したし、私も『断る』なんて選択をしなかった。


音楽室に向かう為に教室を出るとき、やっぱり不服そうにこちらを見ている凛に後ろ髪を引かれる。

でも…
「陽向さん、どうしたの?行くよ」と堀内くんに促されてしまい、側に寄ることはできなくて、『ごめんね』と口パクで伝えて、私は教室を出た。





「手話を教えてくれる陽向さんです」

そう紹介されると、合唱部の皆がパチパチと拍手で迎えてくれる。

あっ、ダメだ。緊張…する…


堀内くんの話しの内容は、

今度、合唱部が福祉施設に歌いに行く事。
産まれつき耳の聞こえない方が居ると施設のスタッフに聞いた事。
だったら振り付けのように手話をしないかと案が出た事。
自分たちで調べたが全くわからない事。


頭を抱えていた時に私が手話ができるとどこかから聞いて(たぶん梓ちゃん)、『少しでいいから貸してくれ』とお願いに来たらしい。

彼が合唱部の部長さんだなんて知らなかった。


合唱部には見知った顔もいくつかあって、緊張でガチガチになった拙い私の手話講座でも、和気あいあいと進んでいく。


そもそも私の性格上、文化部の方が向いているのは確か。

私がピアノやギターを弾けるとわかると、
『このまま、合唱部に入部しない?』という熱烈なオファーも来たが、
それは丁重にお断りした。



気付いたら結構な時間になっていた。
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