第31章 募る
「陽向借りるって、借りて何する気だよ?」
日向が堀内くんに問いかけたが、彼の答えを待たず、凛は私の腕を掴んで立ち去ろうとする。
「あっ。凛、待って…」
引かれる勢いのままに足が動き出すと
「ちょっと待って。言い方が悪かった。お願い!聞いて!」
今度は堀内くんが私の反対の腕を掴んだ。
「痛っ」
両方から引っ張られる形となり、
つい…小さく声を上げてしまった私。
その声に反応して、振り返る凛の顔はものすごく怒ってる。
そんなに怒らなくても…
そう思うけど、余りの剣幕に口には出来なくて、
両方の腕を引かれたまま固まっていると、
私や凛のかわりに、苦笑いのコガが口を開いた。
「あの…さ。とりあえず、その手離した方がいいよ」
「えっ?わあっ、ごめん」
パッと堀内くんの手が離れる。
それでも、不機嫌な凛の態度は変わらなくて、
私はどうしたらいいかわからなくて、
そんな、少し嫌悪なムードの中を割って入って場を収めてくれたのはリコ。
「まぁまぁ、水戸部くん。とりあえず話し聞きましょうよ」
リコの言葉に、
「あっ、相田さんって監督なんだよね?君にもお願いしたいんだ」
そう言って、堀内くんが話しはじめた。