第30章 気兼ねる
トントンとノックの音が響く。
「碧?」と聞こえる声は遠慮がち。
普段はノックなんてせずに扉をあけるお兄ちゃん。
いつもとは違う行動に、お兄ちゃんからの気遣いと、心配が感じられた。
なんか、私。
情けないな…
ぎゅっと枕に顔を埋めて、そのまま返事をしないでいると、ガチャっと扉が開いた。
「スカート、シワになるぞ」
「うん」
促されるまま起き上がった。
お兄ちゃんがベッドの端に腰掛けて、ポンと私の頭に手を置く。
「部活か?彼氏か?友達か?」
「部活…」
「とりあえず、着替えてこっち来い」と頭を撫でて
「お兄ちゃんが聞いてあげましょう」と部屋から出た。
バタンという扉が閉まる音を合図に着替えはじめた。