• テキストサイズ

【黒子のバスケ】伝える。聴こえる。

第30章 気兼ねる


「カントクと陽向は帰れよ。もう遅い」

日向が言う。


「でも…」
「私達も残るわよ」


「じゃあ、カントクは俺や日向が送れるからともかく、陽向は帰った方がいい」

今度は伊月だ。



「そんな。どうして?」

「方向が同じヤツが居ないだろ?誰が送る?今より遅くなると『途中まで』ってわけにもいかないし、こんな事は言いたくないが陽向は危なっかしい。まだ人通りの多いうちに帰るべきだ。それとも、水戸部に遠回りさせる気か?」


そう言われると、なんとも言い返せない。

チラッと凛を見た。
『気にしなくていい』と首を振っている。

私に気を使っているのがわかる。

そうだよね。ただでさえ…いつもより遅くなるのに、私の為に遠回りなんかさせられない。


「わかった」

頷いて、バッグを手に取った。

ここまで言われて、それでもこの場に残ろうとするのは私のわがままだ。

わかってる。わかってるけど…。

役には立てない悔しさと、
自分だけ帰されるという疎外感からか、

なかなか、気持ちは納得できなかった。


それでも…
留まる感情を押し込めて、

「皆、頑張ってね。お先に」と笑って、後ろ手に扉を開く。


廊下に出て、ガチャリと扉が閉まる音がした後で

「ちょっと言い方がキツイわよ」
「ああでも言わなきゃ帰らない。遅くまで残して陽向になんかあったらどうするんだ?」

という、リコと伊月の会話が聞こえた。

/ 402ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp