第30章 気兼ねる
練習終了後。
二年生だけ残って、DVDやら、資料やらを読み漁る。
スカウティング時の日向の一言がきっかけで、これが始まった。
『少しでも手掛かりを』
『何か癖を』
と必死になる表情に皆の試合に向ける意気込みを感じる。
この空気の中、声を掛けるのは忍びないのだが、リコに目で合図されて口を開く。
「皆、お腹空いてない?」
「あれ?陽向?途中で帰ったんじゃなかったのか?」
聞いて来たのは伊月。
「帰ったというより、作りにいったの…」
「これ」と、いつものバッグを前に出す。
「あっ、差し入れ!作ってきてくれたの?」
コガの目が輝いた。
「うん。時間無かったから、簡単なものなんだけど、温かいうちにたべて」
取り出したタッパーの蓋をあけて、皆へ差し出した。
「「「焼おにぎり」」」」
さっきまでの真剣な表情が緩んで、高校生らしい顔に変わる。
次々に手が伸びてきて、あっと言う間に手元のタッパーは空になった。
「さてと、腹も満たされたし、続きすっか」
日向の一言に、
「そうだな」「やりますかー」と同意の声があがる。
あまり役には立たないだろうけど、私も何か出来ないかと皆の近くに腰掛けようとした時、
「待て」と日向に止められた。