第29章 浮かぶ
あー。そうゆうことね。
二人を見て納得した。
凛が何かを伝えようとしているが、火神には分からないのだ。
だけど…。
「火神。ごめん。ちょっと無理…かな?」
「えっ!でも、カントクが…」
「リコの勘違い、かも?」
「えっ?オレどうしたら…」
「うん。『習うより慣れろ』かな?」
我ながら適当なアドバイスをしたと思う。でも、仕方ない。
私にはコガのような通訳機能は備わっていないから。
いつも、身振り手振りから察しているか、イエスかノーかで会話しているだけだ。
凛がどうしても言葉で伝えたい事があれば、ケータイが出てくる。
日常会話ならともかく、バスケの、しかも技術の事なんかわかる訳がない。
「リコー。私じゃ無理みたい…」
頭を垂れてリコに近づいた。
「コガじゃないと無理だよ。私、バスケの事なんかわかんないもん。私でもわかるような事は、火神にも伝わってるし…」
言いながらも、それは…、コガに替わることは、無理だって事はわかっていた。
だって、コガだって選手なんだから練習しなきゃいけない。
通訳の為に、火神と凛に張り付くなんて出来ない。
自分の役立たずぶりに、再度、肩を落とせば、
「またそうやって、下向くー」とリコに小突かれた。
「まぁ、いいわ。なんとかなるわよ。ほら」
私の肩を叩きながらリコが二人を指差す。
あっ!
なんとか…なってる!
私の適当なアドバイスは火神に通じたみたいだ。
「そうだね」と返事をして、二人の元へ戻った。