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【黒子のバスケ】伝える。聴こえる。

第28章 閊える


かばっと後ろから抱きしめられる。

頭を撫でられたり、背中を擦られたりする事はよくあるけれど、こんな風に抱きしめられたのは、思いを伝えてくれたあの日以来で、突然の事にぎゅっと身体に力が入った。


生徒の大多数は購買に居るので、自販機の周囲は静かだ。

「…凛?」

フルフルと首を振っているのがわかる。


きっと、心配して追いかけて来てくれたんだろう…。


「ごめんね…凛。心配かけて…」

また、首を振っている。

「離して…くれない?」

ゆっくりと手が離れた。
何か言いたげな顔をして、ポケットに手を入れたがそれを制止する。

きっと、ケータイが出てくるんだと分かったから。


「持つの手伝ってくれない?」

そう言って、すでに持っているジュースを差し出した。

躊躇いがちポケットから手を出し、私からジュースを受けとる。

そうして人数分買い終えた所で、「行こうか?」と笑いかけて歩き出した。

何か言いたげな顔をした凛は、眉を下げたまま、私の横に並ぶ。



話をしようとしてくれた彼を拒否する形になってしまった事への申し訳なさと、

でも、このことは自分ではどうにも出来ない歯痒さと、



いろいろな感情がぐちゃぐちゃになって、

ぎゅっと胸が締め付けられるみたいに苦しい。



そんな私の気持ちを察するように、歩幅をあわせて隣を歩いてくれる彼。


凛、ごめんね。ありがとう



心の中で呟いた。






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