第27章 知る
練習試合当日。
「陽向さん、大丈夫ですか?」
黒子の声がするが、ビクつく余裕も、返事をする余裕も無い。
コクコクと頷いた。
「顔色悪いですよ。体調悪いですか?」
また聞かれたので、フルフルと首を振る。
「水戸部先輩化してます」なんて失礼な言葉が耳を通り過ぎていく。
「もう、留守番しとけよ。ダァホ」と日向の声が聞こえて、ずっと下に向けていた顔を、おずおずとあげた。
「ちょっと日向くん!そうゆう事言わないの」
バシン‼と肩を叩く音と共に日向を叱るリコの姿。
改めて周りを見れば、
皆が心配そうに私を見つめていた。
申し訳なさが胸一杯に広がっていく。
うん…。
部の事を思えば、日向の言う事は正しい。
「…留守番しようかな?」
この状態の私が行くよりも、行かない方が皆にかける迷惑は少ないだろう…。
「おい、陽向。冗談…だって」
焦る日向が私の呟きを否定した。
彼も、本気で留守番させる気はなかったんだろう。
きっと、私が『頑張るから置いてかないで』と言うと思ったんだろう。
でも…
「ううん。皆が許してくれるならその方が迷惑かけないと思うの」