第26章 増える
今日は雨が降っている。
ロードワークの時間が余ったので、『一年生の実力を見る』と、一年対二年で試合をした。
結果、一年生が勝ってしまった。
「明日からの練習が楽しみね」
恐いオーラを纏いながら二年生達に笑いかけているリコから離れて、片付けをする為に倉庫へと向かう。
(皆、頑張れ‼)
未だ耳の端に聞こえるリコの声に心の中でエールを送り、皆を背にしてガタガタと開けた重い扉。
体育館の端にある倉庫は独特の雰囲気がある。
薄暗い。雨のせいか湿度は高い。
なのに、ヒンヤリとした空気があって…ちょっと苦手だ。
「ヨシッ」
小さな掛け声は自分自身の為。手早く済まそうと姿勢を正した瞬間、
「あのー。マネージャー」と誰かに呼ばれる。
振り向くと、そこに居るのは火神。
私も人の事は言えないが大きな身体は威圧感がある。
「これ、何処にしまうんだ?…ですか?」
ちょっと敬語がおかしいが帰国子女らしいので仕方ない。そもそも私は、敬語が無くてもあまり気にならない。
「あっ、え、えっと…あっちに、お、お願いします」
しどろもどろになりながら指をさすと
「おう、わかった」と火神が返事くる。
そのまま彼にお任せして立ち去ろうと思ったが、
「どちらが先輩かわかりません」と目の前に黒子が現れて「キャッ」と小さく悲鳴をあげた。
驚いたのは火神も同じようで、
「お前、驚かしてんじゃねーよ!」
「僕は最初から居ました」
なんて、二人が揉めだした。
「あ、あの…」
「「なんだ?/なんですか?」」
(息ぴったり…)
クスッと笑うと、怪訝そうな顔をされてしまった。
「あ、あの…。ごめんなさい、黒子くん。あと、か、火神くん、それ…お願いします」
頭を下げて倉庫を出た。