第26章 増える
次の日。
「碧ちゃん」
昼休みが始まると、控えめな声が後ろの扉から聞こえた。
目の前には『行ってらっしゃい』と手を振る凛。
「うん。行ってくるね」
コクンと凛が頷いたのを合図にお弁当を掴み、彼女の方へ向かった。
「行こっか」
「うん。土田はいいの?」
「さとしくん?友達と食べてるよ。水戸部くんは?」
「凛は保健室の当番。なんか、久しぶりだね。嬉しい」
二人で笑い合いながら中庭のベンチに腰掛ける。
「バスケ部、面白い子入ったんだってね」お弁当を広げながら彼女が言う。
『面白い子』の心当たりがありすぎてクスッと笑った。
「碧ちゃん、ちょっと変わったね」
「えっ?変わった?」
彼女の言葉に聞き返した。
「うん。よく笑うようになった。明るくなったよね。それに…その髪型、水戸部くん?可愛い」
「朝、時間があるとたまにやってくれるの…。妹さんのリクエストが複雑になってきたから、練習したいんだって」
ちょっと熱を持つ頬を両手で隠せば、
「仲良しだね」と彼女が笑う。
「お二人程ではありません」と、私もちょっとおどけて笑った。
「やっぱり変わったよ。素敵だと思う」
そう言う彼女もとても素敵で、彼女と友達になれて良かったと改めて思った。