第24章 彩る
マンションの前まで来ると、『ちょっと待って』と言わんばかりの水戸部の視線に引き留められた。
カバンから何かを取り出して私に見せる。
綺麗なラッピングをほどいて出てきたのは、白い玉が一つついたシンプルなヘアピンだ。
「これ、コットンパール?」
コクンと頷いてからケータイを操作して画面を見せた。
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キラキラしたやつより、
碧にはこっちだと思った。
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はじめて…
水戸部に名前で呼ばれた。
水戸部が一歩近づいて、私の髪に手をかける。
ゆっくりとガラス玉のピンが外されて、パールのピンがつけられた。
ガラス玉の方を私に手渡す。
「ありがとう。大事にする。毎日つける」
そう言うと、ニコリと笑う。
つられて、私も笑顔になる。
もう一度、カバンに手を入れて、また私に差し出した。
今度は手紙。
ここで読もうかと、封を切ろうとすると、制止されて、そのままクルッと身体が反転させられ、エントランスの方へ押される。
『後で読んで』と言う事だろう…。
振り返ると『バイバイ』と手を振っていた。
「また明日ね」と手を振りかえしてエントランスへ足をすすめた。