第23章 圧される 【side 宮地清志】
相変わらず、キョロキョロと周りを見渡しながら歩く碧に合わせて、俺らの歩幅もスローモーションかってぐらいゆっくりだ。
コイツと歩くと倍以上の時間がかかる。
この時期のこの時間、
昼間でも寒いのに、夜になれば風は冷たい。
碧の奴、スカートなんか穿いてくんなよ。冷えるだろーが。
お前、すぐ風邪引くだろーが。
「とっとと行くぞ」と手首を掴んで引っ張った。
「えっ?あっ…ごめんなさい」と下を向く碧。
そんな顔をさせたいわけじゃねぇ。
一瞬、俺を睨み付けた航に「おいで」と呼ばれて、
俺の腕を払って、
「寒いね」と航の腕にしがみついて笑う碧を見て、
また、無性に腹が立つ。
「寒くてあたり前だろうが。スカートなんか履いてくるからだろ?」
碧を見れば、
「 …ご、ごめんなさい」
笑顔は消えてまた下を向いた。
本当、俺の前でコイツは笑わねぇ。
こっちは心配してやってんに、全然伝わらねぇ。
なんでだよ。なんなんだよ…。
「碧、清志の言うことは気にすんなよ。そのワンピース可愛いぞ。なぁ、今度兄ちゃんと買いもの行こう!!今度飲み会行くから俺の服選んで!!」
斜め後ろから聞こえるシスコン丸出しな従兄の言葉が、またイライラする。
コイツが風邪引いて一番困るのはお前じゃねぇのかよ。
「飲み会って合コン?」
「違うよー。兄ちゃんは合コン行かなくてもすぐ彼女出来るー」
「航、彼女居たことあるのか?見たことねぇけど…」
「お前より経験豊富だっつうの!」
「へぇー。妹の前でその手の話すんのか?最低だな」
「うっせー、裕也!!」
機嫌の悪さが全面に出ているであろう俺を無視して、三人が喋り出した。