第21章 広がる
「碧、なんか変わったな」
今日はバスケ部の皆で木吉のお見舞いに来ている。
『はい、差し入れ』と作ってきたどら焼きをベッドの隣にあるテーブルへ置くと木吉にそう言われた。
「そうかな?変わったつもりないよ」
その場で振り返って、そう返事をする。
変わったつもり…無くは無い。
少しだけ、見た目に気を使うようになった。
適当に後ろで結わえていただけの髪を下ろすようになったり、
地味な色ばかりだったヘアゴムやピンも、綺麗な色や飾りのついたものに変えた。
特に清志くんからもらったガラス玉のヘアピンはお気に入りで、よく着けていた。
今日も、下ろした髪を片方だけ耳にかけ、ガラス玉のピンで留めている。
「それ、綺麗だな」とヘアピンを指差す木吉の手が私へ伸びた時、ぐいっと身体を引かれた。