第20章 伝わる
どれくらいかわからないけれど、少し間が空いて、
また遠慮がちにトントンと肩が叩かれた。
顔を上げて水戸部を見れば、
すごく、真剣な顔をして上半身をこちらに向けている。
「み…とべ?」
ためらいがちに名を呼ぶと、
目の前の彼は、人差し指で真っ直ぐに私を指した。
そのまま、その手の人差し指と親指で顎を挟み、つまむ様に下へ動かす。
これは…手話…
伝わっていないと思ったのか、
水戸部はもう一度、私を指さして、同じ動きをした。
嘘なんじゃないかと思う。
嘘じゃなかったら、
私に都合のいい夢なんじゃないか…って。
だって、
これは、
この、手話の意味は…
〔君が好き〕
水戸部がそう伝えてくれている。
私を好きだって、言ってくれている。
きっと、この前の話しを覚えていてくれたんだろう。
水戸部なりに伝える方法を考えてくれたんだろう。
胸が一杯になって、涙が溢れた。