第20章 伝わる
溢れる涙が止まらない。
私の気持ちも伝えたいのに、泣いてうつ向くばかりで何も出来なかった。
おずおずと手が伸びてきて、涙を拭うように、私の頬を撫でる。
その手は心地いい。
目に涙をためたまま、顔をあげると、水戸部が首をかしげた。
きっと、答えを求められている。
言わなきゃ。伝えなきゃ
「わ、私も…」
つい、下を向いてしまって、顔を覗き込まれる。
顔が熱い。
「私も…好き…」
瞬間、体が揺れた。
頬に水戸部の肩があたる。
うるさいくらいの心臓の音がお互いの左側で鳴っていて。
背中にあたる水戸部の手が熱い。
《抱きしめられている》
そう理解するには少し時間がかかって、
理解しても、恥ずかしくて背中に手を回すことはできなくて。
水戸部のシャツの裾をぎゅっと握った。