第4章 3 玉章と七つの影
「リクオ君。知り合い?」
「いや。」
カナがリクオにそっと聞き、リクオは首を振る。視線を外さずにリクオと紫苑はただ待っていた。
「聞く必要はなかったかな。こんなに似てるのだから。……僕と君達とは。若く、才能にあふれ、血を継いでいる……」
紫苑とリクオにしか聞こえないようにそっと言葉をささやく。紫苑は怪訝な顔をすると慎重に言葉を紡いだ。
「私達の事を知っているとは光栄だわ。しかし、失礼ながらあなた達とは初対面なうえ名前を名乗っていただけないかしら。」
「皮肉だね。まだその時ではない。しかし、姫君にぶしつけな言葉だけでは失礼だ。お詫びをしなければ。」
そう言うと紫苑の右腕を掴み引き寄せ、そっと耳に口が触れるほど顔を近づけた。
「闇が影を制する。僕が欲しいのはその影と光だ。」
「何を…」
「だけど、君は最初からそのすべてをつかんでいる。僕は今からすべてをつかむ」
紫苑をゆっくり見るからに恭しく離すと、リクオがゆっくり繰り返した。
「僕らが…最初から全てを掴んでいる?」
「違うのか?いこごちのいい場所があるからと言っていつまでも呆けていたのはどこの誰だい?」
「お前は…いったい?!」
「見てて。僕は君より多くの畏れを集めるから。」