第4章 3 玉章と七つの影
牛頭は早く終わらせたいとばかりにいけいけしゃーしゃーと用件を伝えるべく口を開く。
「とにかくじいさんのことは鴉と俺らで探す。お前までうろちょろして厄介ごと増やすんじゃねぇ。」
「そーそ。昼のあんたじゃどうせ何もできないんだしさ。」
悔しそうに俯くリクオ。紫苑は腕を組んで二人を見上げると、少し声を荒げて反撃した。
「ちょっとー、私を忘れないでね。」
「あんたのことはいれてねぇさ。だけど、牛鬼様が言ってたのさ。あんたがいくら強くとも超えられない壁があるってな。」
「牛頭!姫に向かって何を!自分の大将であるお方だぞ!」
「うるせぇな。俺は今忙しいんだ。」
にらみ合う聖夜と牛頭。紫苑はやれやれと頭を押さえるが、リクオはきりっと顔を上げると屋根の上の二人に向かって微笑んだ。
「………わかった。頼むよ。牛頭、馬頭。」
牛頭は顔を背けると、腕を組んで素っ気ない態度を取った。
「めんどくせぇけどしょうがねぇかぁ。まったく、本家扱いってのは肩身が狭いもんだ。」
「あぁ~。牛頭丸照れてる。」
「ちょ…ばっか。適当言ってんじゃねェ。」
牛頭は茶化した馬頭を殴ると、さっと身を動かした。
「いくぞ馬頭丸。」
「はいはーい。」
殴られたにもかかわらず陽気な返事を返す馬頭。妖気の名残を残して姿を消すと、氷麗があきれたようにすでにいなくなった二人の後を見つめた。