第4章 3 玉章と七つの影
「ただごとじゃなさそうな様子でしたが。」
リクオは少し悩むと思いきって言った。
「…僕ちょっと見てくる。」
「では、私も一緒に。」
リクオと氷麗が駈け出そうとしたとき、倉庫の上に妖気が漂った。紫苑たちが顔を向けると風が吹き渡り、二人の妖怪が姿を現した。
「やめとけぇ。」
「牛頭、馬頭。」
「どーしてあんたたちが?」
氷麗がいささかむっとして言葉を当てる。牛頭と馬頭はやれやれと首をゆるゆる振ると嫌そうに言った。
「あの鴉にこき使われてんだよ。てめぇのじいさんが勝手にいなくなっちまったって探せ、ってな。」
牛頭の言葉にえ?っと息をのむ紫苑とリクオ。
「じいちゃんがいなくなった?」
「でも、そんなのいつもの事じゃん。ね?」
「うん。いつも予測不可能なんですもの。」
心配することはないと納得しあうリクオと紫苑。氷麗達も特に気にしてはいないようだ。
しかし、首無しが声をひそめるように言った。
「ですが、若。狒々様があんなことになったばかりです。護衛もつけずに出られて万が一の事があったら……」
「まさか、そんな…じいちゃんに限って。」
リクオに激しく同意する紫苑。だが、内心不安でもあった。