第3章 神の率いる百鬼夜行
「そうだよね。妖怪と陰陽師って敵同士だもんね…」
「き、気にすることないって!僕だって、夜しか妖怪に慣れないし…だから…」
暗く沈んだ眼をしている紫苑。そんな紫苑にかける言葉もなくただその横顔を見つめるだけ。
「紫苑様は立派な奴良組の妖怪ですよ。」
毛倡妓が声をかける。いつの間にか騒ぎは収まっていた。代わりに全員が紫苑とリクオに向かって微笑んでいた。
「そうです。紫苑様もリクオ様も立派な妖怪でもあり、人間です。」
「氷麗…」
「リクオの夜の姿は、昔の総大将に瓜二つ。」
牛鬼がいつのまにやら加わり、皆の中心に立っていた。
「それに紫苑だって、聖獣姿はお主の母親にそっくりだ。」
「さっきのあの目!まさに鯉伴様の目ですもの。まるで、そこだけ鯉伴様が見えてるみたいに。」
「あの目?」
「はい。先ほどの畏れを放った時の目でございます。鯉伴様もよく気持ちが高ぶるとあのような目をしておられました。」
「紫苑様のその人間姿は、お父様に良く似ておられます。」
「リクオ様だって人間姿は、若菜様にそっくりです。」
「二人の仲間思いは総大将譲りか。」
「それじゃぁ、リクオ様の義理堅さと、紫苑様の自由奔放さは鯉伴様譲りですね。」
次々と二人の親や祖父母との共通点をあげてゆく。聞いて行くうちに、紫苑とリクオは互いに共通点がたくさんあることに嫌でも気がついた。
自分の知らない、今は亡き親の姿を自分の中に観ることができる。
「ありがとう。ありがとう、皆。…ありがとう、リクオ。」